November 15112014

 七五三しつかりバスにつかまつて

                           綾部仁喜

+五+三=十五、だから十五日に七五三を祝う、というのは俗説のようだが、枯れ色の深まっていくこの時期、七五三の小さな晴着姿は色鮮やかで目を引く。七五三というと、そんなかわいらしさや着慣れないものを着て疲れて眠った姿などが句となっているのをよく見るが、この句の切り取った風景は極めて現実的だ。目に浮かぶのは作者の視線の先の子供の横顔と、太すぎるパイプをぎゅっと握りしめている小さな手。バスは揺れ、そのたびに転ぶまいとこれまた履きなれない草履の両足を踏ん張る。バスにつかまる、というのはかなり大胆な省略だがリアリティがあり、子供から少女へ、さらにその先の成長をも感じさせる七五三ならではの一句となっている。藤本美和子著『綾部仁喜の百句』(2014)所載。(今井肖子)




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