November 13112014

 後ろ手に歩むは鴨の気持ちかな

                           こしのゆみこ

らりと晴れあがった気持ちのよい道を何も持たずに、手を後ろに回してぶらぶら歩いているのだろう。陸に上がった鴨は羽を後ろに揃え、水かきをつけたオレンジの足でよたよた歩く姿がユーモラスで可愛い。「気持ちかな」だから手を使わずに足だけを推進力に進むその動き、おしりが自然と左右にふれる動作に鴨の気持ちを味わっている。直喩や見立てだと対象に距離感があるが、自分の気持ちにぐっと引きつけて詠んだことで後ろ手に歩く人の姿とよたよた歩く鴨が自然に重なる。なんだか私も後ろ手で歩くたびに鴨の気持ちになって歩けそうな気がする。『コイツァンの猫』(2009)所収。(三宅やよい)




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