November 03112014

 青き天心文化の日こそ掃除の日

                           香西照雄

真面目な句風で知られる作者にしては、珍しく季語(「文化の日」)を揶揄している。中身を簡単に言えば、なんだかよくわからん祝日だから、結局は何の日にでもなり得ると、作句してみせているわけだ。作者はむろん、この日が戦前の明治節であることは知っている。しかしいくら戦後民主主義の世の中になったからといって、文化住宅や文化鍋くらいならまだしも、「文化干し」などという魚の干物までが登場する軽薄な文化ブームに便乗したような命名には、深い憤りを覚えているのだ。ならば「今日は掃除の日だよ」と言い切って、魚の干物よりは少しはマシだろうがと苦りきっているのだろう。と同時に、こんな良い天気の日に、ひとり腹を立てているのも馬鹿馬鹿しいなとも思っている。『合本・俳句歳時記・新版』(角川書店・1974)所載。(清水哲男)




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