November 01112014

 柿紅葉檻の奥より目の光る

                           山崎祐子

う十一月、と毎年のように思うが東京の紅葉黄葉はこれから、ベランダから見える欅は天辺のあたりだけ少し色づいて青空に揺れている。欅や銀杏、楓などは日の当たるところから徐々に染まってやがて一色になるが、桜は初めの頃一本の木の中で遅速があり遠くから見ると油絵のようだ。さらに柿紅葉の中には一枚がまだら模様になっていて鮮やかな中に黒い斑点があるものも。それはそれで美しいのだがどこか不思議でちょっと不気味でもある。この句の柿紅葉は夕日色の紅葉ではなくまだらな紅葉だろう。目の前に柿紅葉、あたりには柿落葉、肌寒さを覚えそろそろ帰ろうかと首をすくめて歩き出そうとしたとき、檻の中にいるそれと目が合う。それがなんであっても印象は冷たい目の光にあり、そこには木枯らしとまでは言えない晩秋の風が吹き抜けてゆく。『点睛』(2004)所収。(今井肖子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます