October 30102014

 おひとつと熱燗つまむ薬師仏

                           高橋 龍

はビール、秋には冷酒と楽しんできたが、そろそろ熱燗が恋しい季節になってきた。「まあおひとつ」と、とっくりの首をつまみ上げる動作を薬師如来が左手に薬瓶を持つ姿に重ね合わせるとは、ケッサクだ。薬師如来は「衆生の病苦を救い、無明の痼疾を癒すという如来」と広辞苑にはある。有難い薬師如来をそば近く侍らせて飲む酒は旨いか、まずいか。日頃の節操のない行動の説教をくらいそうで落ち着いて熱燗を楽しめそうもない。吹く風が冷たさを増す夜の熱燗は独酌で楽しむのが良さそうだ。ちなみに句集名『二合半』とは酒の量ではなく、「にがうはん」と読み、江戸川近くの土地を表す呼び名、作者の原風景がそこにあるのだろう。『二合半』(2014)所収。(三宅やよい)




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