October 15 2014
黄金の木の実落つる坂の宿
西脇順三郎
あの西脇順三郎も数は少ないけれど、萩原朔太郎、室生犀星らと俳句を作った時期があった。「黄金の木の実」とはドングリかギンナンの実のことだろうか。「黄金」という表現はいかにも西脇的だ。「超自然主義」の西脇も、この句では自然主義的な耳と感性を発揮している。しかし木の実が落ちる音に、常人には及びもつかない“音”をおそらく聞いていたにちがいない。『旅人かへらず』の詩人は、ある秋の日の旅宿での憶い出を詠んでいるのかもしれない。しかも「坂」だから、木の実は落ちてころころ転がったのだろう。坂道の様子は? そこまで想像力をかきたててくれる。新倉俊一はこの句を引用して、次のように記述している。「昭和十年末から彼は百田(註:宗治)に誘われて、大森の俳人・西村月杖の主宰する月例句会に、萩原や室生らと共に参加して、月交代で選者をつとめた」。選者をつとめたというから並ではない。翌年、彼らの「句帖」が創刊された。西脇には、掲出句の他に「木の実とぶ我がふるさとの夕べかな」がある。ふるさと小千谷を想う素直な俳句だ。今年は生誕120年にあたる。新倉俊一『評伝 西脇順三郎』(2004)所載。(八木忠栄)
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