October 10102014

 数ふ雁小さくちさくなりにけり

                           石川鐵男

と見上げた空を雁が渡っている。先頭に一羽が居て延々と続いている。中ほどが頭上にくるとざわざわざわざわと雄大な騒音となる。どの位の数だろうか、百羽で一固まり位の単位をいくつ数えても切がない。何と言う数の多さだろう。列の後尾を見送ると次第に点のように小さくなって悠久の空の染みとなり透明になりやがて消えゆく。雁の一族全体を一望の下に収め、ふと気を取り戻せばここにも雁と人間の一期一会の出会いと別れがあった。別れの無い出会いは無い。他に<弁慶が眼鏡で立ちし村芝居><風鈴や背にひんやりと聴診器><あだ名フグ師の名浮かばず桃の花>等々ペーソスに満ちた句がならぶ。『僕の細い道』(2006)所収。(藤嶋 務)




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