October 04 2014
ひらがなの名のひととゆく花野かな
松本てふこ
花野は、華やかだけれどもどこか淋しい、というイメージをまといながら概ねさりげなく詠まれる。そして、読み手それぞれの花野はまちまちでも、はなの、というやわらかい音と共に広がる風景に大差はなく、ああそういう感じだな、と共感を生む。だが、掲出句は少し違っている。そういう感じだな、と客観的に鑑賞するような感覚ではなく、すぐに花野の中を歩いているような心地がするのだ。ひらがなの名のひととゆく、という一つの発見は、花野の風の感触と匂い、明るさとひとことでは言いようのない光の色、それらをごく自然に浮かび上がらせ、読み手は秋に包まれる。「俳コレ」(2011・邑書林)所載。(今井肖子)
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