September 2092014

 葛の葉の吹きしづまりて葛の花

                           正岡子規

ず香りで気づくことが多い葛の花。成長期には一日数十センチメートルも伸びるというから強烈な生命力である。掲出句は、これが葛の花よ、と教わったとき一緒に教えられた句でその時は、ふーん、と聞き流してしまったように思うのだが、秋になって葛の花に出会うたびに心に浮かんで、気がつくと愛誦句となっていた。群生する大きな葛の葉を吹き渡る秋風、その風が止んだ後いつまでも残る花の香りが余韻となって続く。静かな句ほど印象深いということもあるのだろう。昨日九月十九日は子規忌日、秋に生まれ秋に逝った子規である。『花の大歳時記』(1990・講談社)所載。(今井肖子)




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