September 1292014

 椋百羽飛んで田の神おどろかす

                           岩田ふみ子

の神は、日本の農耕民の間で、稲作の豊凶を見守り、稲作の豊穣をもたらすと信じられてきた神である。水神様とも言われる田の神で、脇では農家がお昼なんかをして長閑である。椋鳥は留鳥として市街地や村落に普通にいる。秋から冬には群れで行動し夕方ねぐらでは何万羽という大群になることがある。長い列島では稔りの盛期の所も刈入れ中の所も刈入れが済んだところもあろう。そんな大和まほろばの田んぼに突如として椋の大群が襲った。広大な田んぼを前に驚いているのはただ水神様一人。悠久の空には細やかな秋の雲がずっと広がっている。椋一群は空に沁みて消えてしまった。『文鳥』(2014)所収。(藤嶋 務)




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