August 22 2014
鶺鴒の鳴くてふけふでありにけり
香田なを
鶺鴒は長い尾を振りながら歩きリリッ、リリッと澄んだ声で鳴く。石の鈴を連想させるので石鈴との俗説。広い河川、農耕地、市街地の空地など開けた環境で何処でも見られる。そんな何でもない風景を普段は何気なく見過ごして行く。ところが何でもない普通の日々が突然に失われる事がある。例えば病を得たときなど。出来なくなってしまた生活の諸事、味噌汁の味、気ままな小旅行、サッカー観戦や仲間との談笑。何でもない普通の事も出来ないとなれば羨ましい。そんな時ふっと命を考え儚さを想う。鶺鴒が鳴いている。それを見ている私が今確かにここに在る。万事はこれだけで佳しと思う。作者も病を得た事を機に一書を上梓したと言う。命愛しや。『なをの部屋』(2013)所収。(藤嶋 務)
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