August 0882014

 筒鳥に涙あふれて失語症

                           相馬遷子

鳥は郭公や時鳥に似た姿態で「ポポ、ポポッ」と筒を打った様な声で鳴く。夏鳥として九州以北の山地の林に渡来し、秋は平地の桜の木の毛虫をよく食べに来る。ウグイス科のセンダイムシクイという鳥の巣に自分の卵を託して雛を孵してもらう。仲間の郭公、時鳥なども自分では巣を作らないで他の鳥の巣に卵を産み込み雛を育てさせる。これを託卵という。母は子を知らず子は母を知らない。人には感情の起伏があり喜怒哀楽がある。たかがテレビドラマの世界に貰い泣きする老いの日々もある。作者は今何か感情の高まった拍子に聞こえた「ポポ、ポポッ」という淋しい声が引き金になり、思わずも頬に涙を溢れさせている。感極まって言葉を失し絶句状態になるときがあるが病名をつければ失語症といったところ。失語症ながらも眼が何かを訴えている。目は口ほどに物を言う。瞳ほど雄弁なものはない、まして涙は。『雪嶺』(1969)所収。(藤嶋 務)




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