August 0182014

 葭切や渡船で嫁に来しといふ

                           山本あかね

切は大小の2種がいてオオヨシキリ(全長18cm程度)とコヨシキリ(全長13cm程度)に区別される。オオヨシキリは、その複雑な囀りの中に「ギョウギョウシ、ギョウギョウシ」と聞きなせるため漢字で「行々子」と言われ俳人歌人の好むところである。また好んで葦原に棲むことからアシキリ、そのアシ(悪し)のゲンをかついで(良し)ヨシキリになったとも言われている。両鳥は混ざることなく葭原の内部と外周部で棲み分けをしている。昔交通網も発達しない頃には水路の方が便利でこの葭原を縫って嫁入り道具を満載して嫁ぐ風習の地域が各所にあったという。ひょっとすると花嫁には「ギョウギヨクシ(行儀良くし)、ギョウギヨクシ」と聞こえていたかも知れない。のんびりとした水郷の中に何か忙しげな鳴き声に耳を澄ませば、命の出し惜しみなんぞするもんかとも教えられる。『大手門』(2007)所収。(藤嶋 務)




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