July 2272014

 夏あざみ真昼間も星動きつつ

                           塩野谷仁

しい花に惹かれて伸ばした手に葉の鋭いとげが刺さることから、「欺(あざむ)く」が語源といわれるあざみ。夏のあざみは一層猛々しく茂る葉のなかで守られながら、愛らしい玉房飾りのような花を天に向かって開く。色彩も青紫、深紅など目を引くあざやかなものが多いが、それらはどれも華美というよりどこか悲しみをまとって咲いているように思われる。鋭いとげに守られたあざみの孤独が、青空の奥にしまいこまれた星を感じることで静かに伝わってくる。〈緑陰を出て緑陰に入り休日〉〈虹二重人影にひと追いつけず〉『私雨』(2014)所収。(土肥あき子)




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