July 1772014

 やわらかくきっぷちぎられ水族館

                           長岡裕一郎

季の句だが水族館の醸し出す雰囲気が涼しげで句の雰囲気が夏を思わせる。炎天を逃れて薄暗い館内に入ると明るい水槽では魚たちが自在に泳ぎ回っている。この頃は深さによって棲み分ける魚たちの生態も見られるように数十メーターの高さのある大きな水槽が設置された水族館も多く、水族館での楽しみ方も増えた。動物園や映画館など入口でちぎって渡される半券はどこも柔らかいように思うが、ひらがなの表記に続けて接続する「水族館」の「水」の効果で手の内で湿る半券のやわらかな感触が伝わってくる。人それぞれの思い出の中に水族館はあるだろうが、掲句を読んで、私は幼い頃よく行った須磨水族館を思った。窓の外には須磨の浜が広がっていた。今も海水浴客でにぎわっているだろうか。『花文字館』(2008)所収。(三宅やよい)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます