July 1172014

 来てすぐに気に入つてゐる避暑地かな

                           波多野爽波

者は避暑地がどんな場所であるか、一切、説明していない。描かれているのは、やってきた避暑地を気に入ったという心情だけである。考えてみれば、避暑地にやって来たら、気に入るか気に入らないか、選択肢は二者択一である。当たり前のことなのだが、読後は新鮮。「来てすぐに」の「すぐに」が微妙な味わいを出し、まるで子供のような無邪気な喜びようである。作者本人は意図していなかったかもしれない俳味が、この一句にはある。『骰子』(昭和61年)所収。(中岡毅雄)




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