July 0372014

 夏みかん長い名前の人が買ふ

                           高橋 龍

の句のおかしみはどこから来るのだろう。もちろん夏みかんを買う人の名前なんていちいちわからないし、長い名前の人がたまたま夏みかんを買ったとしても、何てことはない。でもこうして俳句で読むと身体の奥をくすぐられるようなおかしみがある。「夏みかん」と「長い」と頭韻の響きの良さもあるのだけど、そのもったいぶり方に注目だ。夏みかんを買う人は長い名前の人!と限定することがありふれた行為に浮力をつけ「夏みかん」が新たな手触りを持って浮き上がってくる。これも五七五の定形の効果と言えるかもしれない。叙述は奇をてらっていないのに何だか可笑しい。そんな俳句に出会うとうれしくなる。『二合半』(2014)所収。(三宅やよい)




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