June 3062014

 今走つてゐること夕立来さうなこと

                           上田信治

況としては、いまにも夕立が来そうなので安全なところへと駆け出しているというだけのことだ。でも、このように書くと、なんとなく可笑しくて笑えてくる。それは「何が何してなんとやら……」の因果関係の因子をひとつひとつ分解して、それらをあらためて見直してみようとする試みのためだ。しかもこの因果関係はほとんど条件反射的に起きているので、普通は省みたりはしないものである。つまり見直しても何の意味もなさそうなことを、あえて生真面目に見直すという心の動きが、可笑しみを生み出しているわけだ。ひょっとするとこの句は、トリビアルな物や現象にこだわる俳句たちを揶揄しているのかもしれない。俳誌「豆の木」(第18号・2014年4月刊)所載。(清水哲男)




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