June 2062014

 妻ときて風の螢の迅きばかり

                           波多野爽波

波先生に師事していたころ、ご家族の話をうかがうことは少なかった。ただ、ある時、二次会の飲み会の席上で、奥さまの着物の着こなしが、お上手であることを、嬉しそうに話されていたことを思い出す。掲句、奥さまと歩いてきたら、風に乗った蛍が、速く飛んでいたという情景である。下五「ばかり」に、作者の心情が託されている。蛍と言えば、ゆらゆらと、ゆっくり飛び交っているのが、情緒あるもの。それが、風に流されて、速く飛んでいるのでは、情緒がない。意外性の中に、淡い失望を感じさせる。『湯呑』(昭和56年)所収。(中岡毅雄)




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