June 18 2014
梅雨樹陰牡猫が顔を洗ひ居り
木山捷平
猫が顔を洗うと雨が降る、という言い伝えを捷平は知っていて、この句を作ったのだろうか。梅雨どきだから、猫はふだんよりしきりに顔を洗うのだろうか。さすがの猫も梅雨どきは外歩きもままならず、樹陰で雨を避けながら無聊を慰めるごとく、顔を撫でまわしている。ーーいかにものんびりとした、手持ち無沙汰の時間が流れているようだ。猫はオスでもメスでもかまわないだろうが、オスだから、何かしら次なる行動にそなえて、顔を洗っているようにも思われる。猫の顔洗いはヒゲや顔に付いた汚れを取る、毛づくろいだと言われる。しとしとと降りやまない雨を避けて、大きなあくびをしたり、顔を洗ったり、寝てみたりしている猫は、この時季あちこちにいそうである。ちょっと目を離したすきに、どうしたはずみか、突如雨のなかへ走り出したりすることがある。捷平が梅雨を詠んだ句には「茶畑のみんな刈られて梅雨に入る」がある。『文人俳句歳時記』(1969)所収。(八木忠栄)
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