April 2542014

 やどかりの中をやどかり走り抜け

                           波多野爽波

どかりは、巻貝の貝殻に体を収め、貝殻を背負って生活する。やどかりが何匹かいる中、一匹だけ群れの中を走り抜けたというのだ。単純な写生句のようにも見えるが、作者の細かな観察眼が光っている。やどかりという愛らしい小動物が動く様を思い浮かべてみると、愛らしさと同時に、そこはかとないオカシミが伝わって来る。『一筆』(平成2年)所収。(中岡毅雄)




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