April 2442014

 風車売居座る警備員囲む中

                           榮 猿丸

楽で賑わう公園の近辺に「物売り禁止」の看板があちこちにかかっている。隅々まで管理の行き届いた都会では「街角の風を売るなり風車」と三好達治が詠んだ牧歌的光景なんてない。しかし、この句にある滑稽な哀感は今の時代ならではのもの。囲まれてだんだんと意地になってくる風車売。力づくでどかすわけにもいかず、顔を見合わす警備員の困惑ぶりを考えると何となくおかしい。どんなトラブルも少し距離をおいてみると戯画的な要素を多分に含んでいる。ささいなことなのに「まあいいじゃない」と流せないのは、今の世の中が杓子定規で余裕がないせいだろうか。そんな思惑をよそにからから回る風車。このあと風車売りはどうなったのだろう。『点滅』(2013)所収。(三宅やよい)




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