April 18 2014
花満ちて餡がころりと抜け落ちぬ
波多野爽波
この句は、おそらく中村草田男の「厚餡割ればシクと音して雲の峰」が心の中にあったのであろう。しかしながら、一句は草田男の模倣ではなく、爽波独自の世界を構築している。辺り一面に、咲き満ちた桜の花。饅頭を割ったところ、皮と餡の間に隙間があったのであろう。餡がそのまま、抜け落ちてしまった。「花満ちて」が雅の世界であり、一方、「餡」の方は俗の世界である。餡が饅頭から抜け落ちてしまったというのは、日常生活の中のトリビアリズムであるが、そのような世界を詠うことは、爽波は得意であった。『骰子』(昭和61年)所収。(中岡毅雄)
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