April 1442014

 花びらの転げゆく駅ホームかな

                           大崎紀夫

年の花もおわりだな。そんな一瞬の感慨を覚える場所や時間はひとさまざまだが、作者はそれを駅のホームで実感している。たぶん乗降客の少なくなった昼さがりなのだろう。ふと足元に目をやると、どこからか飛んできた桜の花びらが、風に吹かれて転がっていった。目で追うともなく追っていると、束の間ホームにあった花びらは、やがてホームの下に姿を消していく。どこから飛んできたのか。思わず桜の木を探すように遠くに目をやる作者の姿が想像される。こうやって桜の季節はおわり、あっという間に若葉の美しい日々が訪れてくる。年々歳々同じ情景の繰り返しのなかで、しかし人は確実に老いてゆくのだ。そんなセンチメンチリズムのかけらをさりげなく含んだ佳句だと読めた。『俵ぐみ』(2014)所収。(清水哲男)




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