April 1142014

 家ぢゆうの声聞き分けて椿かな

                           波多野爽波

の声は妻の声。この声は長男の声。この声は次男の声。家族の誰かを、声だけで判断している。声だけ聞けば、誰だか分かるのだ。庭には、椿の花が開いている。家中の声を聞き分けるという行為と、椿との関連性を説明することは難しい。ただ、家の内と家の外という空間のバランスが取れていることは確かである。あと、あえて言えば、あの真紅の花びらを開いている椿自体が、声を聞き分けているという幻覚を、瞬時、感じさせてくれる。もちろん、そうした解釈は誤りであり、椿はただ咲いているだけなのだが、幻覚の余韻が漂っている。『骰子』(昭和61年)所収。(中岡毅雄)




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