April 0642014

 峰の湯に今日はあるなり花盛り

                           高浜虚子

本最古と言われる和歌山県湯の峰温泉に句碑があります。熊野古道につながる湯の峰王子跡です。熊野詣での湯垢離場として名高く、一遍上人が経文を岩に爪書きした伝説が残り、小栗判官蘇生の地でもあります。句碑の脇の立て板にはこう記されています。「先生は昭和八年四月九日初めて熊野にご来吟になり、海路串本港に上陸され潮の岬に立ち寄られてその夜は勝浦温泉にお泊まりになり、十日那智山に参詣『神にませばまこと美はし那智の滝』と感動され新宮市にご二泊。翌十一日にプロペラ船で瀞峡を経て本宮にお着きになり、旧社跡から熊野巫神社に参詣された後、湯の峰温泉の『あづまや』に宿られて私どもと句会をしこの句を作られました。十二日に中辺路から白浜温泉に向われたのであります。途中野中の里にて『鶯や御幸ノ輿もゆるめけん』とお残しになられました。先生は昭和二十九年十一月、文化勲章を受賞されましたが、同三十四年四月八日八十四歳で逝去されました。 昭和五十五年七月 先生にお供した福本鯨洋 記」。名湯と花盛りと、虚子を慕って集った人々と、その喜びが「今日はあるなり」に集約された挨拶句です。なお、「湯の峰」を「峰の湯」としたのは、地名よりも場所を写実した虚子らしい工夫で、凡庸を避けています。(小笠原高志)




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