March 2132014

 骰子の一の目赤し春の山

                           波多野爽波

多野爽波は、取り合わせの重要性について、生前、しばしば説いていた。この句は、配合の代表的な佳句。確かに、骰子の目は、一だけ赤い。ただ、そんな些事を俳句にしようなどと、一体、誰が考えたであろう。その部分に、まず、新しさを感じさせる。一方、骰子に配合されるものは、「春の山」である。家の中、骰子の目という小さなモノと、家の外、春の山という拡がりのある空間が結びつけられている。この季語は、他のことばに置き換えることが出来ない。一句は、明るく、めでたさを伝えてくる。『骰子』(昭和61年)所収。(中岡毅雄)




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