March 1432014

 吾を容れて羽ばたくごとし春の山

                           波多野爽波

の山は笑うというが、温かなイメージがある。山に登っていくと、まるで、山が羽ばたいているような気がした。この句には、二つの鑑賞のポイントがある。一つ目のポイントは、上五「吾を容れて」という表現。「吾登り」などとしてしまうと、一句のイメージが損なわれてしまう。「容れて」の部分から、山に抱擁されているかのごとき臨場感が生まれてくる。二つ目のポイントは、「羽ばたくごとし」という飛躍した比喩表現にある。春の山が巨大な鳥であるかのように感じさせる。『湯呑』(昭和56年)所収。(中岡毅雄)




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