March 0332014

 机除け書物除け即雛の間

                           中村与謝男

日の住宅事情では、昔の映画などに出てくるような特別な雛の間を作ることは難しい。それに雛本体はさして大きくなくても、かざるとなればかなりのスペースが必要だ。したがって、句のように机をずらしたり積んである本を片づけたりということになる。句集から推測すると、この雛飾りは一歳を迎えた娘さんのためのものらしい。親心が読者にも沁みてくる。我が家にも娘がいるのだけれど、どういうわけか雛に限らず人形全般が嫌いだったため、こうした苦労はせずにすんだ。しかし何も飾らないのも親として寂しいので、毎年小学館の学年雑誌の付録についてきた紙のお雛さまを、テレビの上にちょこんと乗せておいたのだった。人生いろいろ、雛飾りもいろいろである。『豊受』(2012)所収。(清水哲男)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます