February 2522014

 蕗の薹空が面白うてならぬ

                           仲 寒蟬

の間から顔を出す蕗の薹。薹とは花茎を意味し、根元から摘みとっては天ぷらや蕗味噌にしてほろ苦い早春の味覚を楽しむ。穴から出た熊が最初に食べるといわれ、長い冬眠から覚めたばかりで感覚が鈍っている体を覚醒させ、胃腸の働きを整える理にかなった行動だという。とはいえ、蕗の薹は数日のうちにたちまち花が咲き、茎が伸びてしまうので、早春の味を楽しめるのはわずかな期間である。なまじ蕾が美味だけに、このあっという間に薹が立ってしまうことが惜しくてならない。しかし、それは人間の言い分だ。冴え返る早春の地にあえて萌え出る蕗の薹にもそれなりの理由がある。地中でうずくまっているより、空の青色や、流れる雲を見ていたいのだ。苞を脱ぎ捨て、花開く様子が、ぽかんと空にみとれているように見えてくる。〈行き過ぎてから初蝶と気付きけり〉〈つばくらめこんな山奥にも塾が〉『巨石文明』(2014)所収。(土肥あき子)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます