February 16 2014
飛ぶ雲の浮べる雲となりて木瓜
水原秋桜子
二月の初旬から、毎日空を眺めて仕事をしています。現在、紀伊半島の鎮守の森と祭を撮影移動中で、風の吹き具合によって被写体の姿が変わります。熊野本宮大社の旧本殿跡地には、高さ30m程の大鳥居があって、それを真下からしばらくの間見上げていると、鳥居が徐々に動き始めたのです。立ちくらみかと思いましたが、鳥居のはるか上空を走る雲が見せた錯覚でした。春先の雲は、時に鳥よりも速く飛びます。掲句はそんな、疾風のごとく飛ぶ雲を眺めていますが、遠ざかるにつれて動きはゆるやかになり、「浮べる雲」になっていきました。句は上五から順に、速い動き、ゆるやかな動き、そして木瓜(ぼけ)の動かないたたずまいへと移行して、視点も空から地上へとゆっくり落ちています。雲の動と木瓜の静。しかし、木瓜の花びらが落ちていく動きの余韻を残しています。「水原秋桜子集」(1984・朝日文庫)所収。(小笠原高志)
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