January 27 2014
いちにちのをはり露けき火消し壷
石田郷子
季語は「露(けき)」で秋の句なのだろうが、「火消し壷」が多用される時季の冬句としても差し支えないだろう。いまではすっかりアウトドア用品と化してしまった火消し壷も、昔は家庭の台所で重宝されていた。一日の終りに燃えさしの炭や薪を壺に入れて火を消し、また翌日の燃料として再利用する。消し炭は火がつきやすいので、朝の忙しい時間にはありがたかった。句の「露けき」は「いちにちのをはり」にかかっていると同時に、「火消し壷」にもかけられていると読んだ。火消し壷というと、たいていは灰だらけなのだけれど、句のそれは新品なのか洗い立てなのか、しっとりと露を含んだような鉄の色を見せて立っている。まことに気分がよろしい。火消し壷のそのようなたたずまいに目が行くということは、その日の作者の心の充実ぶりを暗示していると思われる。よき一日だったのだ。ところで我が家から火消し壷が消えたのは、いつごろのことだったか。思い出せない。「星の木」(12号・2014年1月20日刊)所載。(清水哲男)
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