January 1712014

 福笑鉄橋斜め前方に

                           波多野爽波

笑の遊びをしているのは、室内。斜め前方に見えている鉄橋は、室外である。楽しげに福笑に興じている家族は、鉄橋に目を留めることもない。しかし、この句には、狂気に近い危うさが含まれている。上五「福笑」という和やかな季語は、中七「鉄橋」という無機質的な配合によって、揺すぶられる。しかも、その鉄橋は、「斜め前方」に見えている。この感覚世界は、倒錯感に近い揺らぎを読み手にもたらす。『骰子』(1986)所収。(中岡毅雄)




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