January 1212014

 親しきは酔うての後のそば雑炊

                           吉村 昭

しい友と気がねなく盃を酌み交わし、いい感じで酔いが回った最後のしめにそば雑炊を注文する。これは、ある程度年かさのいった男達の句である。女子会ならば、しめにはデザートを注文するだろう。しかし、おじさん達は気もちよく飲むと、そば雑炊のようなしめを欲する。これは、生理的な欲求に近い。皆、一致団結してそば雑炊を注文し、ずるずる音をたててかき込み、男達の飲み会はお開きになるのである。だから、下腹も出てくるだろう。新年会のシーズンである。当方もしめはそば屋であった。それにしても、そば雑炊とは贅沢だ。自分で作ってもみたいが、これは、品のよい料理屋で出てくる一品だろう。なお、優れた小説を数多く残した吉村昭は、学習院大学時代、岩田九郎先生の「奥の細道」の授業中、「今日もまた桜の中の遅刻かな」と書いた紙を教壇の机に置いたというエピソードを、奥方の津村節子が書いている。岩田先生は、むしろご機嫌だったとも。「炎天」(2009)所収。(小笠原高志)




『旅』や『風』などのキーワードからも検索できます