December 26 2013
薔薇型のバターを崩すクリスマス
花谷和子
とてもクリスマスらしい雰囲気を持った句である。私が子供の頃は今ほど街のイルミネーションも家に飾る大きなツリーもなく、普段と変わらない晩御飯の後こちこちに固められたバターケーキがクリスマスを感じさせる唯一のものだった。ケーキなどほとんど口にすることのない子供にとっては待ち遠しいものだった。ケーキにはデコレーションのピンクの薔薇と露に見立てた甘い仁丹(?)の露がついていた。掲句の薔薇はそんな時代めいたしろものではなく、ホテルなどで出される薔薇を象ったバターだろう。「崩す」という言葉がありながらクリスマスの特別な晩餐と、その華やいだ雰囲気を楽しく連想させるのは「薔薇」と「バター」の韻を踏んだ明るい響きと「クリスマス」に着地する心地よいリズムがあるからだろう。思えば日本のクリスマスも昔憧れた外国のクリスマスのように垢抜けたものになりつつある。さてそんなクリスマスも終わり今日からは街のにぎわいも正月準備一色になることだろう。『歌時計』(2013)所収。(三宅やよい)
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