December 142013
試験憂し枯木にさがりゐる縄も
沢木欣一
前書きに「共通一次試験、東京芸大」とある。作者は昭和四十一年、当時の文部省から東京芸術大学助教授に転任、その後教授となり、この句を引いた句集『往還』(1986)出版の翌年、同大学を定年退職されている。試験会場となっている大学構内を歩いているのだろうか。次々に受験生とすれ違いながら、試験があるからこんな思いつめたような生気のない顔になってしまうのだと思っているのか、枯木にさがりゐる縄が象徴的だ。ただ、真剣に勉強している受験生の顔はとても凛々しく美しい。大学入試センター試験までほぼ一ヶ月、講習の準備をしたり過去問の質問に答えたりしながら、今の自分の美しさを彼女等は知らないだろうなと思ったりしている。(今井肖子)
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