December 132013
冬空や猫塀づたひどこへもゆける
波多野爽波
寒々とした冬空が広がっている。見ると、一匹の猫が塀伝いに歩いていた。そこから、作者の想像力は飛躍する。下五部分の「どこへもゆける」は七音の字余り。一句は、独特のしらべをなしている。「どこへもゆける」の表現には、主観が反映されており、解放感への羨望がある。背景が冬空であることが、一句のポイント。自由に移動することが許されている猫に対し、そのことが儘ならぬ自分への屈折した感情が、季語「冬空」から伝わって来る。『鋪道の花』(1956)所収。(中岡毅雄)
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