December 052013
寒鴉歩く聖書の色をして
高勢祥子
餌の少ない今の時期、電柱などに止まってゴミ出しの様子を伺っている寒鴉の翅の色は冴えない。祈祷台にあり多くの人の手で擦れた聖書はくたびれた黒色をしている。街角にひっそりたたずみ、道行く人に聖書を説く人の多くは黒っぽい服を着ていてまるで鴉のようだ。「とんとんと歩く子鴉名はヤコブ」の素十の句なども響いてくる。そんな連想をいろいろと呼び込む聖書の色と寒鴉の結びつきに着目した。同句集には「曼珠沙華枯れて郵便受けの赤」という句もあって、植物や動物の色をリアルに感じさせる色彩の比喩がうまく句に組み込まれている。『昨日触れたる』(2013)所収。(三宅やよい)
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