November 302013
嬰のまはりはことばの華よ冬満月
熊谷愛子
嬰には、やや、とふられている。泣き声と話し声、生まれたばかりの赤子を包む幸せがまず音として感じられ、それから風景となって見えてくる。花を思わせる、嬰、の文字と、華、が呼応しているところに、冬満月の円かでありながら冴え冴えとした光が加わって余韻を生む。二人の子を持つ友人がだいぶ離れた三人目を授かった時、二人でいいかなって思っていたのだけど、赤ちゃんを囲んでいる時の家族がなんだかなつかしくなったの、と言っていたのを思い出す。生まれたての命は無条件に幸せをもたらしてくれるのだろう。前出の友人の末娘も大学生、甘やかされているはずが二人の兄より強く逞しく、ずっと母を幸せにしている。『旋風』(1997)所収。(今井肖子)
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