20131105句

November 05112013

 眼帯の中の目ぬくし黄落期

                           角谷昌子

謝野晶子が「金色の小さき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に」と詠んだように、銀杏を代表する鮮やかな黄色の落葉は、見慣れた場所を忘れさせるような美しさがある。まだ青みが残る頭上の空、赤く染まる地平線、そして舞い散る金色の落葉。まるでクリムトの世界に閉じ込められたような色づかいである。一方、掲句は一面の黄落のなかにいて、光りを遮断し刺激から守られた眼帯の奥にぬくみを感じる。そのあたたかさは眼帯のやわらかな布に守られたしずかに閉じたまなこの存在に行き当たる。この豪奢に舞い落ちる幾百枚の黄金の葉のなか、かくも穏やかなまなこをわが身が蔵していることの不思議を思うのである。『地下水脈』(2013)所収。(土肥あき子)




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