October 12 2013
わがいのち菊にむかひてしづかなる
水原秋桜子
瓶の菊、と題された連作五句のうちの一句。五句のちょうど真ん中、三句目である。菊の美しさを描こうと、朝夕菊をじっと眺めて作ったという。昭和八年の作というから、四十一歳になったばかりというところか。のちにこの連作について「力をこめたものであるが、菊の美しさを描き出すにはまだまだ腕の足らぬことが嘆かれた句」と自解している。しかし、一句だけをすっと読むと、どうすればこの菊の美しさを表現できるだろうか、という言わば雑念のようなものが消えて、菊の耀きと向き合うことによって作者の心が言葉となって自然にこぼれでているように感じられる。以前も一句を引いた『秋櫻子俳句365日』(1990・梅里書房)、俳句と共にその人となりが味わえて興味深い。(今井肖子)
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