東京地方、暑さが戻ってくるようだ。急な気温の変化にご注意。(哲




20131007句(前日までの二句を含む)

October 07102013

 木の蔭の中の草影秋暑し

                           山口昭男

は大気が澄んでくるから、見えるものの輪郭がくっきりとしてくる。影についてもそれは同じで、陽炎燃える春などに比べれば、その差は歴然としている。この句は「木の蔭」と「草の影」を同じ場所に同時に発見することで、澄み切った大気の状態と夏を思わせる強い日差しとを一挙に把握している。それにしても、木陰の中の草影とは言い得て妙だ。ふだん誰もが目にしている情景だが、たいていの人はそのことに気がつかないか、気づいても格別な感想を持つことはないだろう。そうした何でもないようなトリビアルな情景を拾い出し、あらためて句のかたちにしてみると、その情景以上の何かが見えてくるようだ。俳句の面白さのひとつはたぶん、このへんにある。この発見に満足している作者の顔が見えるようで、ほほ笑ましい。『讀本』(2011)所収。(清水哲男)




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