安食堂のテーブルに、汚れたソース壜が立っていることがある。外は野分の風が吹き荒れている。一見、単なる取り合わせのように見えて、汚れたソース壜は、野分の濁流や被害を彷彿させる。それでも、ソース壜は、じっと立っているのだ。家の内と外とを繋ぐものは、一本のソース壜でしかない。それでも、野分の情景をありありと感じさせてくれる。『一筆』(1990)所収。(中岡毅雄)
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