September 05 2013
西空にして雷神の快楽(けらく)萎え
馬場駿吉
今年の夏の暑さは尋常ではなかった。40度近い気温に温められた空気が上昇し規模の大きな積乱雲となり、恐ろしいほどの夕立と雷鳴に襲われた日も多かった。今までに経験した雷は空が暗くなるにしたがって、遠くから少しずつ音が近づいてきて、まず先触れのように夕立が降りだしピカッと空が光るのと雷の音がだんだんと誤差がなくなってくる。光ってから、「いち、にい、さん」と雷と自分がいる場所の近さを測ったものだった。しかし今年はとんでもない量の雨が降りだすのも突然だし、間合いもおかず雷が頭上で暴れ出す激しさだった。思い切り雷鳴を轟かす、あれが「雷神の快楽」というものだろうか。「天気が変わるのは西から」とむかし教えてもらったことがある。西空が明るんできて、雨の勢いも弱ってゆく。秋の訪れとともに雷神のお楽しみもそろそろ終わりと言ったところだろうか。『幻視の博物誌』(2001)所収。(三宅やよい)
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