September 03 2013
秋の日に干す沖海女の命綱
桑原立生
海女には「磯海女」と「沖海女」があり、磯海女は比較的浅い海を潜るため一人でも可能だが、沖海女は船で沖に出てからの作業なので、船を操り、合図を送る相手が必要となる。海女は海中の作業のなか、呼吸の限界で浮上の合図を船上へと送り、合図を感じたらパートナーは命綱を一気に引き上げる。20メートルにもなるという命綱を引き上げるには、わずかなタイミングが命取りになるため、命綱の多くは家族が担当するという。文字通り命をつなぐ綱の実物は驚くほど華奢である。透き通るような秋の日差しのなか、干されるなんのへんてつもないロープの名が命綱だと知った瞬間、それはかけがえのないものとなる。へその緒という命綱で母とつながっていた彼方の記憶が、ふと脳裏をよぎる。『寒の水』(2013)所収。(土肥あき子)
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