June 23 2013
梅雨雲の裂けたる空に岳赭き
水原秋桜子
昭和十四年、『蘆刈』所収。磐梯山と檜原湖を詠んだ連作の一つです。山岳雑誌『山と渓谷』に見る山岳写真のように、構図が決まった句です。作者は、梅雨雲のむこうに岳赭き(やまあかき)を置いて、遠近法の構図におさめています。同時に、不安定な梅雨の雲行きの中に、一瞬の裂け目からその赭き威容を現わにする磐梯山に出会う。それは、動中静在りの邂逅でしょう。句中に描かれている要素は、水・空気・光・土の非生命です。灰色に湿った視界の中に一瞬垣間見えた磐梯山の「赭」は、それらの要素に火山の火を加え、色彩が強調されています。また、下五を「赭し」ではなく「赭き」と体言止めにしたところも、磐梯山の「赭」は形容ではなく、土質そのものの物質性を示しているように読みます。(小笠原高志)
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