June 14 2013
立ちしまま息をととのふ水中花
櫻井博道
水中花だから「立ちし」はわかるけど、なんで「息をととのふ」なのかというと作者の呼吸が苦しかったのだった。宿痾の結核とずっと付き合ってきた博道(はくどう)さんが水中花を見ている。対象と自己とが一枚になるようにという楸邨の方法がここにも生かされている。逆に考えてみよう。博道さんの人生についてまったく無知であったとき、或は作者名を消してこの句だけを見たとき、この「息ととのふ」は同様の感興を伝えるや否や。本人についての正確な事実を知っている場合よりは漠然とはするけれど、やはり作者の尋常ではない呼吸の状況が推測できると僕は思う。水中花を見ているときも呼吸への意識が離れないということであることだけはこの表現から確かだからだ。『椅子』(1989)所収。(今井 聖)
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