June 06 2013
逝く猫に小さきハンカチ持たせやる
大木あまり
読むたびに切なさに胸が痛くなる句である。身近に動物を飼ったことのある人なら年をとって弱ってゆく姿も、息を引き取るまで見守るつらさを知っているだろう。二度と動物は飼わないと心に決めてもぽっかり穴のあいた不在を埋めるのは難しい。この頃はペットもちゃんと棺に入れて火葬してくれる業者がいるらしいが、小さな棺に収まった猫に小さなハンカチを持たせてやる飼い主の気持ちが愛おしくも哀しい。とめどなくあふれる涙を拭いながら、小さい子供が幼稚園や小学校に行くときの母の気遣いのようにあの世に旅立つ猫にハンカチを持たせてやる。永久の別れを告げる飼い主の涙をぬぐうハンカチと猫の亡きがらに添えられた小さなハンカチ。掲句の「ハンカチ」は季語以上の働きをこの句の中で付与されていると思う。『星涼』(2010)所収。(三宅やよい)
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