June 02 2013
薔薇の園水面を刻む風の術
中村草田男
薔薇園の中の池の情景でしょうか。句集では、「術」に「すべ」のルビがあります。水面には薔薇の花びらが映り込んでいますが、風が吹いているので、その姿は小刻みに変化しつづけています。水面は、空の青と薔薇の赤とが溶け合うようにゆらいでいますが、けっして混ざり合うことはない、水面です。咲いている薔薇と水面の薔薇は、実像と虚像の関係にありますが、風がドローイングしているととらえる作者の眼には戯れがあります。昭和三十四年、虚子先生の告別式からしばらく経ってからの句なので、あるいは虚子先生の面影を偲んでいるのかもしれませんが、これはわかりません。むしろ、風が施した「術」は花鳥諷詠で、それを客観写生して亡師に捧げている。この方が少し近いようです。なお、Bara・kiZamu・kaZe・suBeの濁音によって、風紋が響いています。『中村草田男集』(1984・朝日文庫)所収。(小笠原高志)
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