May 31 2013
帽灯をはずすと羽抜鳥めくよ
野宮猛夫
坑道に潜るための電球付きのヘルメットが帽灯。採炭の仕事を終えて頭からヘルメットを外すと髪がぺちゃんこになっていて、まるで羽抜鳥のように見える。当時はおしゃれな男性の髪はリーゼントが全盛だったろうから、余計に髪が後ろに突っ立って鳥に似てくる。労働、社会性、党派闘争というホップステップジャンプで導いたのはみんな高学歴エリートたちだ。実社会のみならず俳句の世界でもそうだった。「進歩的」エリートたちは最後のジャンプまで行かずステップまででリベラルを気取るか「わびさび」に引き返して勲章をもらう。野宮さんの作品はそんな意図から抜けている。労働のあとの髪を羽抜鳥に喩えるところからは党派的意図や教訓的箴言には跳ばない。実感そのものである。実はこの実感そのものというのが「詩」の本質なのだと強く思う。『地吹雪』(1959)所収。(今井 聖)
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